2023年12月20日、ダイハツ工業は、安全性能を担保する認証試験で不正を行なったことを発表しました。
SNS上では
どうして不正を行なったって分かったの?
どうして不正がバレたの?
誰が告発したの?
などの声が上がっていました。
そこで今回は、ダイハツの不正が分かった理由や告発者について、調査し、まとめました。
ダイハツの不正はなぜわかった?
ダイハツの不正はなぜ分かったのでしょうか?ダイハツの不正発覚の理由を見ていきましょう。
ダイハツの不正が分かった理由は「内部告発」
1989年から34年間もバレなかったダイハツの様々な不正がなぜこのタイミングでバレたのでしょうか?
結論、ダイハツに勤務している社員が不正した事実を内部告発したことが要因です。
なお、第1次公表では、2023年4月の 「内部通報」 を契機として不正行為を確認した旨が公表されているが、これはダイハツの内部通報制度に寄せられた内部通報を意味するものではなく、 ダイハツの内部者から外部機関に対する通報があり、 ダイハツは、 当該外部機関からの指摘により不正行為の疑いを把握した経緯がある。
ダイハツ第三者委員会調査報告書
ダイハツ以外の自動車会社の不正も「内部告発」が多い
自動車業界は人の命を乗せるものを作るので安全面でも非常に厳正な試験を行います。
そのため、試験へのプレッシャーから不正に走ってしまう人も少なくありません。
実際2000年代に入ってから自動車業界の闇が5回暴かれています。
表にまとめるとわかるように、自動車業界の闇の部分は社内従業員からの告発の割合が高いようです。
発覚年 | 企業 | 事件名称 | 発覚原因 |
2000年 | 三菱自動車工業 | リコール隠し事件 | 内部告発 |
2004年 | |||
2016年 | |||
2022年 | 日野自動車 | 日野自動車エンジン不正問題 | 社内調査 |
2023年 | 株式会社ビッグモーター | ビッグモーターの保険金不正請求問題 | 内部告発 |
ダイハツ不正発覚の告発者は誰?
ダイハツの不正が発覚した際の告発者は、以下の2つに分けることができます。
- 4月に不正が発覚したときの告発者
- 5月の第三者委員会立ち上げ後の告発者
それぞれ誰が告発したのか見ていきましょう。
4月に不正が発覚したときの告発者「ダイハツ滋賀テクニカルセンターの社員」
4月に不正が発覚したときの告発者は、ダイハツ滋賀工場内にあるテクニカルセンターの社員である可能性が高いです。
4月の告発では、「側面衝突試験の不正認証」が発覚しておりますが、ダイハツの衝突試験は全てダイハツ滋賀テクニカルセンターの安全性能開発室で行なっています。
実際の試験実施を担当する評価グループは、40名全員が衝突試験上を備えた滋賀テクニカルセンターに勤務している。
親会社であるトヨタの豊田章男会長も、滋賀工場へ不正の原因究明の視察に行った時、「この中に告発者がいらっしゃると思います。本当に言ってくれてありがとう。」と話しています。
さらに、今回不正に関与していた社員は、「係長級のグループリーダー以下」と報告されています。
そのため、4月の告発者は
- ダイハツ滋賀テクニカルセンターの安全性能開発室に勤務
- グループリーダー以下※一般的には係長級の役職
のダイハツ社員に絞られます。
5月の第三者委員会立ち上げ後の告発者 「複数のダイハツ社員」
5月の第三者委員会立ち上げ後の告発者は、「複数のダイハツ社員」です。
第三者委員会は、4月に発覚した不正の類似案件を調べるため、以下の4つの調査をダイハツ社内で行いました。
- 従業員へのヒアリング
- 従業員へのアンケート調査
- ホットライン(通報窓口)
- デジタルフォレンジック調査
そのため、ヒアリングやアンケート調査、ホットラインを通じて、複数の社員から不正の告発があったものと思われます。
【時系列】ダイハツの不正発生から発覚するまでの流れ
ダイハツの不正が発覚するまでの流れは1989年まで遡ります。
今回ダイハツが行なった不正発覚の流れをまとめると、大きく12個の契機がありました。
- 1989年:不正が行なわれ始める(24年間で6件程度)
- 2010年:親会社のトヨタ自動車が、2011年9月以降に軽自動車事業に参入することを発表
- 2011年:ミライースの開発で大きな成功
- 2011年:短期開発の促進加速
- 2011年〜2014年:安全性能担当部署の人員削減
- 2014年〜2023年:不正行為増加
- 2023年4月:内部告発により不正が発覚(ダイハツの内部者から外部の通報機関に通報)
- 2023年4月28日:認証申請における不正を発表(1回目の不正発表)
- 2023年5月15日:第三者委員会設置
- 2023年5月19日:認証不正行為を発表(2回目の不正発表)
- 2023年6月8日:第三者委員会が他にも類似案件がないか調査を開始
- 2023年12月20日:認証申請における追加の不正があったことを発表(64車種174件)
上記の時系列に沿って、不正発覚の経緯や、不正が増えた理由など紐解いていきます。
それでは、1つずつ簡単に見ていきましょう!
1989年:不正が行なわれ始める(24年間で6件程度)
1989年ごろから不正が行われるようになりました。
しかし、当時はまだ不正を行う人は少なく、1989年から2014年の約25年の間で6件程度に収まっていました。
しかし、2014年以降、一気にダイハツの不正件数は爆増していきます。
2014年から一気に爆増に増えた要因としては「トヨタの軽自動車戦略」と「人員減少」が大きな要因です。
2010年:親会社のトヨタ自動車が、2011年9月以降に軽自動車事業に参入することを発表
ダイハツの親会社で親あるトヨタ自動車が、2011年9月以降に軽自動車事業に参入することを発表しました。
それに伴いダイハツは、第3のエコカー「ミラe:S(イース)」を2011年に販売開始します。
2011年:ミライースの開発で大きな成功
この「ミラe:S(イース)」は、開発と予算を削減する観点からリードタイムを短くする「短期開発」により、従来よりも大幅に短い期間での開発に成功しました。
この成功体験から「短期開発」がダイハツの強みとして、社内外で認識されるようになりました。
2011年:短期開発の促進加速
2011年の「ミラe:S(イース)」の短期開発の成功から、より短期開発の体制が組織に根付くことになりました。
その結果、 過度にタイトで硬直的な開発スケジュールの中で車両の開発が行われるようになりました。
具体的には、
- 開発の各工程が、全て問題なく進む想定
- 問題が生じた場合の対応を行う余裕がない日程
- 問題が生じた場合であっても、開発期間の延長は到底困難
などの課題が発生する事態となりました。
2011年〜2014年:安全性能担当部署の人員削減
短期開発が推し進められる一方で、安全性能を確認する担当部署の人員は、2011年から2014年の4年間で約60%も人員削減されています。
2014年〜2023年:不正行為増加
短期で開発を進めなければいけないにも関わらず、2014年には人員が削減されており、現場の従業員は圧倒的に人員が足りていないとコメントしていました。
開発機種の数や日程の厳しさに対して人員が圧倒的に不足していると思います。 特に昨年度安全性能の乗員 Gr が半減したと聞いています。正社員若手社員の定着 率が悪くこれからの担い手が育っていないことで中堅層が薄く、若手とベテラン が多くなってる印象です。
引用:第三者委員会調査報告書
「短い開発期間」「ミスしても修正できないスケジュール」「圧倒的な人員不足」。このような理由から2014年以降は安全試験のデータを改竄する不正が爆増したと言えます。
2023年4月:内部告発により不正が発覚
2023年4月、内部告発により不正が発覚。組織風土として根付いていた文化も突然崩壊します。
告発したのは前述した通り、ダイハツ滋賀テクニカルセンターの社員です。
2023年4月28日:ダイハツ工業が認証申請における不正を発表(1回目)
ダイハツは2023年4月28日、海外市場向け4車種の側面衝突試験の認証申請において不正行為があったことを発表しました。
会見で佐藤恒治社長は「なぜこのようなことが発生するのか、エンジニアと本音で話し合える環境をつくりながら真因を究明したい」と調査に全力を挙げる意向を示しました。
2023年5月15日:第三者委員会設置
不正を発表した半月後、ダイハツは第三者調査委員会を設置しました。
第三者委員会の構成
委員長:貝阿彌 誠〔弁護士 大手町法律事務所所属〕
委員 :仁科 秀隆〔弁護士 中村・角田・松本法律事務所パートナー〕
委員 :中山 寛治〔公益財団法人 自動車情報利活用促進協会 理事〕
2023年5月19日:ダイハツ工業が認証不正行為を発表(2回目)
一回目の不正を公表してから1ヶ月後、OEM供給を受けている、トヨタ・ライズのHEV車について同様に安全性能テストで不正を働いていたことが判明しました。
2023年6月8日:第三者委員会が他にも類似案件がないか調査を開始
2023年6月8日、複数の不正が見つかったことにより、第三者委員会は他にも類似の案件がないか調査を開始します。
2023年12月20日:ダイハツ工業が認証申請における追加の不正があったことを発表
そして12月20日、ダイハツ工業は認証申請における追加の不正があったことを発表。
合計174個も不正が見つかり大きな波紋を呼びました。
ダイハツの不正認証は、なぜ30年以上告発がなかったのか
ダイハツの不正認証は、関与してる社員は相当数いるにも関わらず、なぜ30年以上一度も告発がなかったのでしょうか。
その理由は、以下の5つに大きく分けられます。
- 社内で通報しても、揉み消される
- 法規理解とコンプライアンス意識の低下
- タイトな納期とミスの許されない風土
- 現場任せで管理職が関与しない職場
- チェック体制の不備
一つずつ、詳細を見ていきましょう。
社内で通報しても、揉み消される
一つ目の理由は、「社内で通報しても、揉み消される」です。
ダイハツ社内には内部通報システム「社員の声」が2002年度以降設置されています。
しかし、社員によると「内部通報を行なっても、該当部署に連絡が行くだけで隠ぺいされるか、犯人探しが始まるだけ」とのことで、制度が機能していなかったようです。
第三者委員会が従業員へ行ったアンケートの自由記述より
内部通報を行っても、監査部が直接事実確認することは無く、当該部署の部長・室長・GLに確認が行くのみで、隠ぺいされるか・通報者の犯人探しが始まるだけです。
法規理解とコンプライアンス意識の低下
二つ目の理由は、「法規理解とコンプライアンス意識の低下」です。
第三者委員会の調査では、認証試験担当者自身が「認証法規に関する研修を受けたことがなかった」と話しています。
そのため、法規自体を正確に理解しないまま、認証試験を行っていたようです。
また、会社の方針で短納期になればなるほど、不正をするのが社内で当たり前になり、コンプライアンスの意識はかなり希薄だったとのことです。
タイトな納期とミスの許されない風土
三つ目の理由は、「タイトな納期とミスの許されない風土」です。
ダイハツの強みは「短期開発」と社内外で認識されるほど、短納期にこだわっており、ミスなく納品するスケジュールがデフォルトになっていました。
また、「スケジュールは絶対」で、経営トップの決断がなければ変更できないと言われるほど厳しいものだったようです。
認証試験は合格して当たり前
販売スケジュールを変更するなんてありえない!
という風土の中で、「絶対に合格しなければいけない」というプレッシャーが試験担当者にはあったようです。
第三者委員会が従業員へ行ったアンケートの自由記述より
根本にあるのはギリギリの短期開発日程。製品企画と新進が机上で決定した日程は、綱渡り日程でミスが許されない。(中略)なんとか力業で乗り切った日程が実績となり、無茶苦茶な日程が標準となる。縦割りで、問題が起これば責任部署が吊し上げられる風土。
何が正しいか正しくないかではなく、とにかく一発合格を出し続けなければいけない過酷な職場環境だったと考えられます。
そんな過酷な価値観だからこそ告発しようという発想が生まれなかったのかもしれません。
現場任せで管理職が関与しない職場
4つ目の理由は、「現場任せで管理職が関与しない職場」です。
第三者委員会が調査を進める中で、不正を知ってて黙認していた上司はおらず、不正が起きてることを上司は全く知らなかったということが判明しました。
上司に相談しても、問題が解決せず、むしろ仕事が増える状況にあったようです。
第三者委員会が従業員へ行ったアンケートの自由記述より
できないと声を上げるとなぜできないのか、できるようにするにはどうするのかと逆に仕事量が増える為に、声を上げないことや、諦め感などが出てきている。
上司の目が行き届かないところで不正が行なわれていたため、経営層もこんなに長い間不正に気づかなかったのでしょう。
チェック体制の不備
5つ目の理由は、「チェック体制の不備」です。
今回不正のあった認証試験を担当する職場は、ブラックボックス化していて、他部署の書類チェックがなかったそうです。
そのため、不正があっても他部署が不正に気付くことはありませんでした。
コメント
コメント一覧 (2件)
とある会社の嘱託社員ですが、我が社でも同じようなことが起こってます。来年63歳なので波風を起こすことなく辞めて行こうと思いますが残された後輩達の事を思うと … どうしていいのかわからない。誰か教えてください。
65歳の誕生日を迎える前日に内部告発しましょう。あとのことは知ったこっちゃ無いです。